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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)335号 判決 1950年6月20日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人弘中武一の上告趣意は、末尾に添えた書面記載の通りである。

上告趣意第一、二点について。

原判決は擬律の点においては有毒飮食物等取締令第一条を適用しているに過ぎないけれども本件アルコールがドラム缶入り工業用アルコールであることを判示しているところから見ると、右アルコールを同条第一項の「飮食物」とは認めないで同条第二項を適用した趣旨であること明らかである。そして同条第二項違反の犯罪が成立するには、メタノールを飮食に供する目的で讓渡又は所持すれば足りるのであって、メタノールの一定量以上の含有ならびにその認識を必要とするものではない。それゆえ、原判決が所論のアルコールにメタノールが含有されていた事実及びその旨被告人において讓渡人から申渡されていた事実を証拠によって認定判示している以上、原判決には所論のような違法はない。

よって、本件上告を理由ないものと認め、旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決する。

以上は当小法廷裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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